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IT人材は2030年には78.9万人不足するが特にビッグデータ、IoT/M2M、人工知能が狙い目

2016年6月10日に、経済産業省が「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果を取りまとめました」という発表をしました。

これを受けて、オンラインメディアの方でも以下のような報道がなされました。

IT mediaビジネスオンライン:IT人材不足が深刻化、2030年には78.9万人不足に 経済産業省調べ

経済産業省によると、IT人材(IT企業と、ユーザー企業の情報システム部門に所属する人材の合計)は現在91.9万人なのに対し、17.1万人が不足していると推計。人口減少に伴い、退職者が就職者を上回ることで19年から先は減少に転じる一方、IT需要の拡大が見込まれるため、人材ギャップは悪化。IT市場が高率で成長した場合、30年にはIT人材数が85.7万人なのに対し、不足数は78.9万人に上ると予測している。

またその前の4月27日には、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)から「IT人材白書2016」概要(PDF)が発行され、そちらでも同様の指摘が行われています。

ZDNet Japan:国内IT人材の不足が深刻化–IPA調査

「情報サービス業」に限ってみると、2012年3月より「不足」になり、2012年12月のマイナス10ポイントから2015年12月ではマイナス32ポイントになり、やはり「不足」の方向に進んでいることが分かる。

これらの統計で指摘されているのは、以下の3点です。

  • IT人材が不足している
  • IT市場は高率で成長している
  • 日本のIT人材の年収が低く満足度も低い

これは、以前から言われ続けていた事が、数字として具体的に現れて来ただけとも言えますが、もう少し詳細にこの調査結果を見てみたいと思います。

見出し

現時点でも17.1万人不足している

まず、2015年段階でもIT技術者は17.1万人不足しており、内訳を見るとITベンダーで126,300人、Web企業で5,700人、ユーザー企業で38,700人となっています。

IT人材不足数の試算結果(高位シナリオ)

さらに、売上見通しに関するアンケートの回答結果のとおりに市場が拡大すると解釈し、5年間の売上伸び率の平均値についての回答結果(約2~4%)を、2015年以降の各年売上・予算伸び率見通しに調整・適用して推計した高位シナリオでは、2020年には37万人、2030年には79万人程度が不足という予測に。

また、労働生産性が1%上がったとしても2020年に31万人程度、2030年には56万人程度、労働生産性が3%上昇したとしても、2020年に19万人程度、2030年には20万人程度が不足します。

また、大手調査会社(ガートナー)による今後のIT投資の伸び率の平均値(1.0%)を最も手堅い予測値として利用し、市場の伸び率として各年に適用した低位シナリオであっても、2020年には22万人程度、2030年には41万人程度の不足となっています。

ただし、この大幅な不足は2019年をピークに入職率が退職率を下回り、産業人口が減少する事も影響している点では注意が必要です。

将来IT人材数と入職・退職率の推移

先端IT技術がポイントとなる

この調査では、ITベンダー、ユーザー企業の情報システム部、ユーザー企業の現場事業部門とWeb企業に対して行われた、先端IT技術に対するアンケートも掲載されています。

同業他社にはないアイディア・独創性が重要

現在の事業環境に対する認識として、直近5年間程度の売上の増減傾向/事業拡大志向を見てみると、全体的には「それほど変わらない(±約1割以上)、「やや伸びている(+約1~2割程度)」となっていますが、Web企業では「大幅に伸びている(+約2割以上)」という回答が他の企業よりもやや多くなっています。

直近5年間程度の売上の増減傾向(企業別比較)

自社が提供する製品・サービスの市場における自社の「強み」として最も多いのは、「製品・サービスの品質・クオリティの高さ」であり、2番目に挙げられているのは、ユーザー企業の情報システム部門の人材及びユーザー企業の現場事業部門の人材、Web企業の人材では「知名度・信頼感」、ITベンダーの人材では「顧客対応の柔軟さ」となっています。

自社の「強み」に対する認識(企業別比較)

「同業他社にはないアイディア・独創性」では、この項目を「強み」として回答した割合は、ITベンダーでは、Web企業の半数以下となっており、ユーザー企業よりも割合が低く、「製品・サービスの価格の安さ」に着目すると、この項目を「強み」として回答した割合は、ITベンダーが最も高くなっています。

ITが生み出す競争力に対する認識(企業別比較)

このことから、この調査結果内でも指摘されているように、ITベンダーはWeb企業よりも顧客対応の柔軟性や価格の安さ等を「強み」とするビジネスを展開する傾向が強く、「同業他社にはないアイディア・独創性」に対しては強みを持っていないと考えている事がわかります。

一方Web企業では、「企業の競争力にITが大きな影響を与えるようになっている」、「自社の勝ち残りのために、ITを効果的に活用することが必須である」、「自社はITを効果的に活用している」、「ITの普及によって自社のビジネスチャンスは拡大している」のいずれの項目においても、「強くそう思う」という回答が特に多くなっていますので、先ほどの売上の増減傾向から見ても、ITの効果的な利活用が自社の競争力やビジネスチャンスに直結しているという認識が強く、それが売上にも影響していると考えられます。

クラウド、ビッグデータ、IoTが大きな影響を与える

「すでに影響の大きい技術」と「今後大きな影響を与える技術」で見てみると、「クラウドコンピューティング」、「情報セキュリティ」、「モバイル端末」などは、「これまで特に大きな影響を与えてきた」と認識されていることがわかりますが、「ビッグデータ」、「IoT/M2M」、「人工知能」については、今後特に大きな影響を与えると認識されていることが読み取れます。

  「すでに影響の大きい技術」と「今後大きな影響を与える技術」 (全回答者)

また、先端IT技術を担う人材のうち、「量」的側面(人数)に関する不足感が強い人材としては、「クラウド」、「ビッグデータ」、「IoT/M2M」に関する人材であることが述べられています。

人材の質(能力)については、ITベンダーでは特に「クラウド」のほか、「ウェアラブル」、「ビッグデータ」「ロボット」となっており、Web企業では「人工知能」という回答が最も多く、「ロボット」や「デジタルビジネス」となっています。

市場の成長性も先端IT技術にかかっている

「ビッグデータ」、「IoT」、「人工知能」は、「今後大幅に市場が拡大する」と考えらえていて、市場が今後も成長するかどうかもこの領域の成長にかかっています。

先端IT技術に関するニーズや市場の拡大見込み

そのため、この領域の人材については今後特に「大幅に不足する」とも考えられている事もわかります。

今後特に「大幅に不足する」先端IT人材(全回答者)

優秀な人材は欲しいが給与水準が低い

自社の人気と給与水準に対する認識(企業別比較)を見ると、「自社では、同業他社よりも優秀な人材を獲得している」の設問に対してITベンダーのみ「そう思う」という回答がやや低い水準であり、「自社では、優秀な人材の獲得が以前より難しくなっている」、「今後、優秀な人材の獲得は現在よりも難しくなる」については、「そう思う」がどの業種でも25%前後と高い水準となっていますが、「自社の給与水準は、世間一般よりも高い」については特にITベンダーが低くなっています。

自社の人気と給与水準に対する認識(企業別比較)

給与に対する満足度が低い

また、国別の給与・報酬に対する満足度を見てみると、日本は満足しているが7.6%、どちらかと言えば満足しているを含めても50%に満たない状況で、日本のIT人材の給与に対する満足度は非常に低く、その面でも「業界としての魅力」が低くなってしまっていることがわかります。

給与・報酬に対する満足度

自己学習・企業研修・教育も足りていない

労働力不足を解消するためには、個々のIT人材の生産性を高めることも重要ですが、日本においては「日頃の自己研鑽の程度」は他の国と比較しても低い状況です。

IT人材の自己研鑽の程度についての各国比較

また、日本のIT人材の企業の教育・研修制度に対する満足度も、あまり高くない状況です。

IT人材の企業の教育・研修制度に対する満足度の各国比較

このあたりについては、この調査結果でも指摘がされているように、大学などがインターネット上で提供する大規模な公開講座や大学などと提携してそのような講座を提供するオンライン学習支援サービスであるMOOC(Massive Open Online Course)や、弊社のオンライン研修サービス「TRYCODE」などをどのように活用するかがポイントにはなってくるでしょう。

IT業界は人材不足が続くが待遇改善が合わせて必要

IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果を取りまとめました」で示されているように、IT業界での人材不足は今後も継続して続きますし、「ビッグデータ」、「IoT/M2M」、「人工知能」の領域については、これからも成長をしていく領域だと考えられますので、プログラミングを学びIT業界に飛び込む事はこれからもチャンスであるというのは変わりません。

しかし、報告書概要版 (PDF形式:2,106KB)では、「おわりに~IT関連産業及び我が国の産業の競争力の強化に向けて~」という章では、日本のIT業界にある問題点について、以下のように指摘しています。

米国IT企業の高い競争力は、結果として、企業の収益性の高さにつながり、それが優秀なITエンジニアに対する高い処遇を可能にする要因の一つとなっている。
よって、例えば前掲のような日本のIT関連産業における処遇の問題を解決するためには、産業の競争力強化という根本的な課題に正面から向き合い、解決を図ることが必要となる。

例えばGoogleやAmazon、Microsoft、Facebookなどの米国のIT企業は、従来は存在しなかった新しい製品・サービスの提供に挑戦し、今やそれぞれの領域においてトップブランドを築いている。こうした事実を踏まえると、米国のIT企業の高い競争力を実現しているのは、新たな領域への挑戦とそこでの勝利であり、また、それを可能にした革新的な発想力と高い技術力、そして未知の市場への挑戦意欲であるといえる。

日本のIT企業が米国のIT企業のような処遇等を実現するためには、米国IT企業に高い競争力をもたらしたこれらの性質を、日本のIT企業もまずは備える必要がある。

これについては、IT業界の各企業が意識を変えて行かなければ、多様な人材を活用できず、優秀な人材は海外に流出してしまう、という状況になりかねませんので、IT教育という面で弊社もその一助となれるようにしていきます。

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